ビートルズのイギリス公式版第7作めのアルバム『リボルバー」。この時期になると、ビートルズはライブへの興味はほとんどなくなり、スタジオ録音に注力するようになります。それを証拠に、このアルバムからはビートルズとしてライブ演奏された曲は一曲もありません(もちろん、解散後それぞれのソロでは演奏された曲もあります)。まあ、「Tomorrow Never Knows」なんかは、当時の環境ではライブでの再現はほぼ不可能だったでしょうね。
以下、アルバム全体のトピックです。
・レコーディング技術がさらに進化し、逆回転奏法やサウンドエフェクト、テープループなどの技法をふんだんに駆使したアルバムになっている。このアルバムに収録されていない「Rain」も同時期のレコーディング。
・のちにジョンのアルバムでベースを担当することにもなるクラウス・フォアマンがこのアルバムのジャケットワークを担当しているが、その際の報酬は40〜50ポンドだったと本人が回顧している(現在の価値に直すと15〜20万円相当)。
Revolver
1. Taxman★★★★☆
ジョージの作品。
歌詞を全然知らない時点においても「なんか、政治とか皮肉ってそう」て分かるタイトル。内容はジョージの面目躍如といったところ。サウンド面は、有名なところでは間奏のリードギターはポールのプレイ。ベースラインもそうですが、これがキレッキレであります。このプレイを耳にした時のジョージの心境ってどんなだったんだろ…?「アンソロジー」に収録されてた長いコーラスのバージョンもなんか好きです。
「バッドマン」の映画の曲はこれをパクってる?
2. Eleanor Rigby★★★☆☆
ポールの曲。ジョンが一部手伝っているそう。
こういった物語的な曲はポールの得意とするところ。ただ、僕はこの傾向の曲はちょっと苦手で…この曲で言うと曲調も内容も暗いからなー、口ずさむこともないし。
「ハザマケンジ」って方、全国に何名さんほどいらっしゃるんでしょうね?
3. I'm Only Sleeping★★★★☆
「眠い」っていう感覚をこれほど的確に表している歌もなかなかないんじゃないでしょうか?テープの逆回転等サウンドの進化と曲のテーマが見事に結びついています。「うるせぇな、いいから寝かせてくれよ」って気持ちは誰しも抱いたことがありますが、この気持ちを楽曲にまで昇華させたことがとにかくスゴい!
4. Love You to★★☆☆☆
ジョージのインド風楽曲第一弾。前作ラバーソウル収録の『ノルウェーの森』はシタールを使用してはいますが、サウンドは全然インドじゃないですしね。まだ、なんというか、こなれておらず「やってみました」感が強いようです。ポールやジョンは、この曲のアルバム収録をよくOKしましたよね…
5. Here, There and Everywhere★★★☆☆
ポールがジョンの家に行った時、ジョンが寝ていたので起きるまでに仕上げた曲。このシチュエーションでよくこんな名曲を作り出せるなぁ!三声のハーモニーが美しい。某コーヒーブランドの曲と似てるからカバーバージョンなのかと思って調べたけど無関係でした(笑)
6. Yellow Submarine★★★☆☆
このアルバムでは、この曲が一番日本人には有名かも知れません。作ったのはポールですが、リンゴの曲と勘違いしてしまうくらいいい雰囲気を作り出しています。ビートルズの代表曲、とまでは言えないかも知れませんが、こういう歌をうまくアレンジして発表してしまうのがビートルズの懐の深さかもしれません。
7. She Said She Said★★★★☆
「イエローサブマリン」の次がこれ(笑)歌詞の内容はちょっと不気味なものもありますが、曲調はそれとはかけ離れており、爽やかと言ってもいいくらい。ただ、アレンジはこのアルバム全体の雰囲気も相まってやや粘っこくどんよりしています。何気にリンゴのドラムが冴え渡っている曲のひとつでもあります。
8. Good Day Sunshine★★★☆☆
この曲、ラヴィンスプーンフルの曲を参考に作られたということです。今の若い人にはわからなそうですが、当時はなかなか人気があったようです(僕が知っているのは「サマーインザシティ」くらいですが)。
9. And Your Bird Can Sing★★★☆☆
ジョンは「捨て曲だ」とコメントしたらしいですが、え、そう?ツインギターがキャッチーでカッコいいじゃん!と僕なんかは思うのですがみなさんはいかがでしょう?もう少し前のライブを演っていた時期にこの曲ができていたら、ジョンの評価も変わったのでしょうか?
10. For No One★★★★★
ビートルズ全曲中でも屈指の作品。曲も詞も、この世界観はそうそう出せない。ホルンを取り入れたのも正解。自分で弾けそうもないフレーズは外部ミュージシャンにきっちり任せるのがビートルズのすごいところ。これはビートルズの判断なのかあるいはジョージマーティンなのか。だけど、ホルンを吹いたゲストミュージシャンに対してポールが余計なこと言って喧嘩になりかけたとか…ポールってけっこうそういうとこあるみたいで(笑)なんだかんだで、僕も大好きな曲です。このアルバムの中だと「I'm only sleeping」と双璧ですね。
11. Doctor Robert★★★☆☆
小粒ながら小気味のいい佳曲だと思います。もうちょい評価されてもいいような。エンディングはフェイドアウトですが、音量上げて聞いてみるといちおうちゃんと終わっている、というのは有名な話、なのかな。
12. I Want to Tell You★★★☆☆
跳ねたピアノの音程がなにやら不安を誘う…なんとなーく、どっちつかずというかもやもや感が残る曲かもしれません。このアルバム内でジョージ作の3曲のうちでは「Taxman」がダントツに良すぎるかなー。
13. Got to Get You Into My Life★★★☆☆
これもドラッグソングということですが、明るいな…ハイな気分を表しているということか。ブラスが本格的に導入されており、曲を特徴づけています。「アンソロジー」のバージョンを聴くと、ブラスないのでけっこう寂しい…(オルガンだけ鳴ってるとことか)。
14. Tomorrow Never Knows★★★★☆
このアルバムで一番最初に録音された曲(最後に録音されたのは「She Said,She Said」)。すごい曲ですよね、これは。まず、当時のレコーディング技法をふんだんに駆使しているサウンド。ポールの操るテープループから始まり、同じリズムの繰り返し、黄泉の国から響くかのようなボーカル(レスリースピーカーを通しているとのこと)、このアルバムでおなじみ逆回転サウンド、それがワンコードで延々と連なっていく。ビートルズがやらなくても誰かがやったかもしれない試みだけど、やっぱり初めてやったのはビートルズだった、という感じでしょうか。タイトルも、「A Hard Days Night」同様リンゴの言い間違いを採用。仮題の「Mark1」もなかなかそれっぽくて良かったですけどね。
何がすごいって、こういうのを曲としてまとめて発表できるバランス感覚です。サウンドが複雑すぎる故に、ワンコードでリズムは繰り返しになっているのでしょう。これでリズムやメロディーが複雑だと、(少なくとも当時は)何やってるか分からなくなったと思う。この辺のバランスはやはりジョージマーティンが調整していたのでしょうか?少なくとも、この曲を作ったジョンではなさそう(笑)今じゃDTMでループサウンド作るのなんて当たり前ですが、当時の技術でやっていたことを考えるとめまいがしますね。
このアルバムのみならず、この時代を代表する名曲!
オススメ曲
I'm Only Sleeping
The Beatles I'm only Sleeping (unedited) acoustic version (rehearsal)
「For No One」とか「Tomorrow Never Knows」ちゃうんかいっ!て言われそうですが…まあ、理屈じゃないのですこういう事は(笑)もう雰囲気が最高だし、僕の気持ちを代弁している曲。