ビートルズの栄えあるデビューアルバム「Please Please Me」から!
と言っても、後追いで聴いた人はたいていそうでしょうが、僕もこのアルバムを最初に聴いた訳ではないんですよね。リアルタイムでこの音源を聴いた人の気持ちはどんなだっただろう?僕もそういう経験をしてみたかったなぁ。
オリジナル版は1963年3月22日発売。感想に重きを置きたいので、アルバム全体にまつわるトピックは箇条書きにします。
- 1963年2月11日、このアルバムに入れるための曲(アウトテイク含む)すべてがたった一日で(!)録音された。
- このアルバムに収録されている「Love me do」は、実はリンゴではなくセッションドラマーのアンディ=ホワイトがドラムを演奏している。プロデューサーのジョージ=マーティンがリンゴのドラム演奏の技量を疑問視したためである。
- ジョンは当日風邪をひいており、声がかすれている。ジョンの喉のコンディションを考慮し、「Twist and shout」はセッションの最後に回された。
- ジャケットの構図は、のちにゲットバックセッションでも取り入れられたが、採用されたのはベスト盤「青盤」である。
- 「Misery」でピアノが入っているが、演奏はジョージ=マーティン。この頃はキーボードの導入はあまりなく、ハーモニカやタンバリンが多用された。
この辺が有名なところです。メンバーはそれぞれ担当の楽器に専念、鍵盤やその他必要なサウンドはジョージ=マーティンにおまかせ、という感じでした。その分、この頃はハーモニカの存在感が大きな比重を占めていますね。
では、各曲コメント行ってみましょう。
「Please Please Me」
1,I saw her standing there★★★☆☆
「1,2,3,ファウ!」で始まる、これ以上オープニングナンバーにふさわしいものはないでしょう、という曲。歌いだしの部分は当初「Well,she was just seventeen, never been a beauty queen」だったのが、ジョンの提案により「Well,she was just seventeen,you know what I mean」になったと言います。これに関しては、変更後の方がかなりいいなと感じます(意味深な感じがして良い)。この曲はライブハウスなんかでやるとかなり盛り上がるでしょうねー。
2.Misery★★★☆☆
あれ?この曲カバーじゃなかったっけ?て今調べても思ってしまいました。おそらくですが、ヘレン=シャピロという女性シンガー向けに書いたためビートルズぽくない雰囲気になったのかもしれません。ちなみに、シャピロさんからは「歌詞が暗いから…」という理由で歌うのを断られてしまったとか(笑)僕としては、歌詞が暗いということよりも、この明るい曲調でタイトルが「Misery(悲惨)」であることへの違和感がすごいです。
3,Anna(Go to him)★★★★☆
最初に聴いた当初は「なんてことない曲だなー」なんて思っていたのですが、年をとったからなのか、だんだんこの曲の良さに気づいたような気がします。この曲でもジョンは風邪をひいているため鼻声なんですが、個人的には「よくぞ風邪をひいていてくれた」なんて思ってしまいます。この声のANNAだから味があるというか(ジョンには悪いけど)。あまり語られませんが、この曲でも彼らのコーラスワークは抜群に良いです。
4,Chains★★★☆☆
なんとなく曲調が「Misery」とかぶるのですが、こちらはカバー曲です。ボーカルはジョージ。やっぱ声の線が細いなーと感じます。ライブで他の楽器にかき消されるんじゃないかと余計な心配もしてしまう。ジョージのライブ見に行ったこともないくせに大きなお世話なんですが。ただ、この細さが良かったりするんです。のちのちジョージのボーカルがばっちりハマる曲も出てきますし。
5,Boys★★★☆☆
僕は、リンゴのボーカル曲はけっこう好きで、この「Boys」も好きなんです。カラオケでも良く歌います(ビートルズ知らない人はまず知らない曲なんで、ヒトカラでしか歌いませんが…)。聴きどころはリンゴのボーカルの他、コーラスの「パッシュア パッパッシュア」間奏のジョージのギターソロ、そしてギターソロ前のリンゴの「オーライジョージ!」です。
6,Ask me why★★☆☆☆
正直あまり印象に残らない曲です。のちに「Tell me why」という似たタイトルの曲が出たり、歌詞に「misery」て出てきたり、気が散るというか(笑)この曲の流れみたいなのはなんとなく好きなんですけどね。余談ですが「おでんにも水割り」という空耳が隠れている曲でもあります(さがしてみてね)。
7,Please please me★★★★☆
まちがいなくこのアルバムのハイライトのひとつです。それもそのはず、この曲がバカ売れしたためにファーストアルバムが急遽企画されたという経緯があります。当初はイントロがギターで始まっていましたが、やっぱりハーモニカのイントロが決まってますね。この曲でもコーラスワークが冴え渡っており、特に「Come on,Come on」のところはえも言われぬ高揚感があります。ボーカルの高音部はポールが補完したり、と初期の代表曲の特徴はこの曲ですでに網羅されている感じです。加えて、途中ジョンのラップ(?)まで聴けてしまう!このラップ部分、初めて聴いた時からかなり練習したので今でも歌えます。
8.Love me do★☆☆☆☆
何回か演奏しているはずですが(ドラムのテイク違いだけでも3パターンあるし)、出来としてはよくない気がします。チャートであまりふるわなかったのも納得です(それでもイギリスでは最高17位)。ポールのボーカルも上ずっておりよそ行きな感じ。緊張していたのでしょうがないんですけどね。もうひとつのシングル候補「How do you do it」でも良かったんじゃないかという気もしますが、これは結果論ですね。ビートルズ自身がオリジナルで勝負したいという意向でしたし。
9.P.S.I love you★★☆☆☆
この曲は「Love me do」のB面曲であり、当日はドラムはアンディ=ホワイトが担当していたため、リンゴはここでもドラムではなくマラカスを演奏しています。この曲もあまり印象になくて…この曲がA面候補に挙がったこともあるということですが、さすがにインパクトが弱いなぁ。
10.Baby it’s you★★★☆☆
ジョージ=マーティンのチェレスタ(間奏で鳴ってるやつ)がいい味出してますね。ジョンの声もしぶい。この日の喉のコンディションとしては、この曲の方が歌いこなすのは難しい気もしますが影響を感じさせませんね。
11.Do you want to know a secret★★★☆☆
ボーカルはジョージ。ギタープレイともどもがんばっていていい感じです。ジョンがディズニーアニメに影響されて書いた曲ということですが、イントロのギターで思い浮かべるのは西部の荒野…(なぜ?)
12.A taste of money★☆☆☆☆
うーん、このテイストはあんまり好みじゃないなぁ。ここいらで静かな曲を持ってくる必要があるのは理解できるのですが…ジョンがタイトルをもじって「A waste of money(金の無駄)」とコーラスを入れるという逸話があります。実際ジョンもこの曲を演奏するの嫌いだったみたいですね。
13.There’s a place★★★☆☆
ビートルズが恋愛以外の曲を書き出したのはキャリア中期の頃から、なんて意見を聞くのですが、この曲はすでにラブソングの域を超えているのでは?と思っています。タイトルからして「場所」がメインですし、歌詞の中にも確かに好きな人の存在は出てくるものの、フォーカスされているのは自身の内面です。のちの「Nowhere man」に通じるものがあり、深く突き詰められてこそないものの興味深い歌詞です。サウンド的にも、サビがメジャー調(Eメジャー)にも関わらず全編哀愁が漂います(ミドルエイトはC#マイナー調)。
14.Twist and shout★★★★☆
アルバム後半のハイライト。最後の録音曲のため、ジョンもリミッターを解放しました!もうこの曲の収録の頃にはジョンののども限界が来ており、のど飴(当時あったんだ…)なんかを舐めてなんとか歌いきったそうです。このレコーディングのバージョンは、ジョン本人も二度と再現ができなかったでしょうね。ビートルズのカバー曲の中でも屈指の出来だと思います。僕もこの曲をライブで演奏したことがあります。サックスなんか入れても面白そう、と今では思いますが当時は結局パーカッションをカポカポてきとーに鳴らしてました(笑)
オススメ曲
Twist And Shout (Remastered 2009)
Twist and shout
「Please please me」か「There's a place」かで悩みましたが、このアルバムのライブ感を体現しているという観点からやはりこの曲で!
知らない方はぜひどうぞ、何も言わず一度は聴いてみてください。